代表メッセージ

東京都新宿区といえば高層ビル街、オフィス街、そして繁華街のイメージが強いが高齢化率は約20%と決して低くない。この新宿区で平成21年7月「最期まで口から食べられる街、新宿」をモットーに新宿食支援研究会(新食研)を設立した。

われわれが考える食支援とは、「本人、家族に口から食べたいという希望がある、もしくは身体的に栄養ケアの必要がある人に対し、適切な栄養管理、経口摂取の維持、食を楽しんでもらうことを目的としてリスクマネジメントの視点を持ち、適切な支援を行うこと」である。

新食研が目指す活動は、地域に向けて一方向の情報発信を強化することではない。地域という単位で意識改革をし、医療職、介護職などという垣根も越え、市民も巻き込み「何らかの食や栄養の異常を見つける人」、「適切な支援者につなぐ人」、そして「結果を出す人(支援者)」を無限に作りだすことである。
われわれの活動のすべてが「見つける」「つなぐ」「結果を出す」にあるといっても過言ではない。

この活動を進めていくに当たり、当初から次の3つの活動目標を掲げた。
①介護職、特にホームヘルパーの食に対する意識向上、②食支援にかかわる多職種間でのネットワーク作りと、③食支援の地域での実践。この活動目標に対し、20のワーキンググループが設置されそれぞれ活動している(平成28年3月現在)。

新食研が目指す食支援の実践は他地域のそれとは大きく異なる点が2つある。
1つは、介護現場の気づきを起点とした食支援であること、もう1つは食支援を街づくりとして実践しようとしているところである。

他地域にも食支援活動を行っているところは多くあるが、そのほとんどは医療職が中心になり、知識や技術を研鑽している。しかし、地域で食支援活動するためには、地域でニーズが上がってこなければ始まらない。多くの市民が栄養や摂食嚥下機能についての知識が乏しく、その対応法を知らない。
われわれは現場で気付きが発生するためにヘルパー研修や食形態判別表作成、さらには食支援サポーター、リーダー養成を行っており、気づいた人が誰かにつなげられるためのネットワーク、そして結果を出せる専門職チーム作りまでを一連の流れとして行っている。

新食研のメンバーは現在24職種121名(平成28年12月現在)。このメンバーは全員、新宿における各職種のリーダーかつプロフェッショナルである。
よく「顔の見える関係」と言われているが、そんなことだけで結果を出せるはずがない。プロがプロの仕事を現場でしっかりやりきること。その結果があっての情報共有であり、顔の見える関係でしかない。
新宿の連携は「腕(スキル)と腹(マインド)の見える関係」以外目指していない。自分の職業のプロフェッショナルでないものとの多職種連携などあり得ない。だからこそ、新食研は結果を出し続けられる。

新食研は、「最期まで口から食べられる街、新宿」を目指し動き始めた。われわれの活動は地域のムーブメントである。

たしかに最期まで口から食べられる楽しみ、満足感を与えることがわれわれの重要な使命である。しかし、専門職のネットワークをいくら強固にしたところで、介護現場が、いや、社会が食の大切さに気付かなければこの活動に意味はない。「口から食べる」ことの意味を社会に問うことこそ真の食支援と考えている。

平成27年4月26日
(平成28年3月15日改訂)

新宿食支援研究会 代表
五島 朋幸

新食研を語る(平成28年8月5日)

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